断熱はエコとの‘かすがい’
神戸大学院 工学研究科 建築学専攻
藤田 浩司 助教
しかし、断熱をしっかりとすることで、自然の日射を上手く利用したりできるようになるので、断熱はエコとの良い関係をつくる‘かすがい’のようなものなのです。
夏や冬のように外が暑かったり寒かったりするときは断熱に頑張ってもらって日射などの自然を上手く活用し、春や秋のように外が気持ち良い温度のときは窓を開けて風を取り入れれば良いのです。暖房や冷房が一切必要なくなるわけではありません。しかし、断熱をしっかりとすると、暖房や冷房を効率よくすることができるようになるので、石油やガス、電気を使う量を減らすことになり、地球への負担を減らすことができます。
では、なぜ「断熱」が‘かすがい’となるのかを以下に説明します。
熱の移動方法には3つのパターンがあります。
例えばエアコンからの温風や冷風がそれです。
②物体と物体の間を電波のように飛んで伝わる「放射」という移動方法。
太陽からの熱は放射として地球に飛んできており日射とよばれています。
③物質の中を熱が伝わる「伝導」という移動方法。
フライパンに載せた肉が中まで焼けるのは、肉の中を熱が伝導として伝わっているからです。
現在、地球温暖化問題などを背景に環境への配慮の必要性がさけばれ、できるだけ石油やガス、電気に頼らないようにすることが求められています。毎日の暮らしの中で快適さを得るための場合も同様で、できるだけ‘エコ’に快適さを得たいところです。そこで、上に挙げた3つの熱の移動方法が関係してくるのですが、実は私たちはこれらの熱の移動方法を‘まあまあ’上手くコントロールしてきています。
その例を以下に見てみましょう。
『対流』
夏の暑い夜や春や秋に、窓を開けて涼風を取り入れたりすることがあると思います。これらは、部屋の温度の調節の他、そよ風が身体にあたり気持ち良さを与えるといった効果もあります。もちろん、寒い冬には窓を閉めて冷たい外気が入ってくるのを防ぎます。
『放射』
冬の昼間に太陽の光(日射)が射し込んでいる窓際でする日向ぼっこはとても気持ちが良いものです。日射を遮りたい夏は、すだれやブラインドで日射が室内へ入るのを遮ったりしています。このように「放射」も取り入れたり遮ったりして上手く利用しています。
窓を開けたり閉めたり、日射を取り入れたり遮ったりということは住んでいる人が比較的簡単に行えるので、「対流」や「放射」は上手くコントロールしてきていますが、3つめの『伝導』はあまり上手くコントロールできていないことが多いのです。上で‘まあまあ’としたのはこのためです。
熱は熱い方から冷たい方へ伝わります。夏の冷房時は外から屋内へ、冬の暖房時は屋内から外へ、壁や窓の中を「伝導」の形で熱が流れていきます。
夏の暑さや冬の寒さをできるだけ家の中に伝えないようにするには、この「伝導」による熱の流れを小さくしてやらなければなりません。このことを「断熱」と言い、その役目を果たすのが断熱材やペアガラス(複層ガラス)などです。
断熱材といっても、なかなか日常は見かけることが無くどんな物なのかわからないかもしれませんが、カップラーメンの容器の大きい版と思ってください。カップラーメンの容器の中に100℃近いお湯を入れて容器の外側を素手で持ってもそれほど熱くありません。これはカップラーメンの容器が「伝導」熱を小さくしてくれているからです。もし、容器が熱をいっぱい伝える金属で作られていたら素手で持つことはできないでしょう。
これまで建てられてきた家の多くは、この断熱があまり十分ではありませんでした。だから、外の夏の暑さや冬の寒さが家の中にどんどん伝わってきてしまっていました。断熱が十分ではない家では、夏に窓で日射を遮っても壁から熱がどんどん入ってきてしまいますし、冬に日射を取り入れて暖めようとしてもその熱はどんどん外へ逃げていってしまいます。暖房機の熱も同様に逃げていってしまいますので、暖房の効率も悪くなってしまいます。逆に、断熱が良い家では、日射を上手く利用したり、暖房やエアコンを効率よく使うことができます。
このように「断熱」をしっかりすることで「伝導」により伝わる熱を小さくする事ができます。このような理由で「断熱」はエコとの良い関係をつくる‘かすがい’となるのです。
「伝導」、「対流」や「放射」による熱の移動を上手く活用して、エコに快適さを得られるようにしましょう。
【10月29日に行われた、施工者向けセミナーの目次】
※クリックすると動画が見れます。
講師: 神戸大学 藤田 浩司先生
第1部 「なぜ家の断熱化が必要か?」
- 1)関西は家の中が日本で一番寒い
- 2)家の中が寒いと亡くなるリスクが高い
- 3)日本の8割りの家はリフォームが必要
- 4)石油が無くなるのを防ぐために
- 5)日本の家は外国より省エネじゃない
- 6)これからの断熱リフォームに対する国の政策
第2部 「断熱の仕組み」
第3部 「断熱リフォームの効果」
- 効果1冬場でも寒くない 室温の上昇
- 効果2 同じ室温でも寒くない?? 体感温度の上昇
- 効果3 足元の冷えが和らぐ!! 上下温度差の低減
- 効果4カビや腐りなどの大敵!!結露の低減
- 効果5夏に効果があります!上階室の暑さを和らげる
- 効果6モチロン!省エネ・省co2・光熱費の削減
第4部 「部位別の断熱リフォームの方法」
- 1)熱の出入りの激しさの割合
- 2)開口部のエコリフォーム
- 3)壁のエコリフォーム
- 4)屋根・天井のエコリフォーム
- 5)床のエコリフォーム
まとめ
質疑応答

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